「子どもたちへ そして臼杵の未来のために」
 健やかな生活を送るために「食」はとても大切です。しかし、「食」の現状は、様々な問題を内包しています。家族で囲むことの少なくなった食卓、間違った食事の採り方、食事バランスの偏り、「食」と農業との乖離、また、海外からの食糧に大きく依存していることなど・・・
 私たちは様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践しなければなりません。また、実践することができる次世代を育てていかなければなりません。
 臼杵市は、「家族みんなが、新鮮で安全な地元の食材を使った、我が家の味が並ぶ食卓を囲み、未来につながる生涯現役のまち」を目指しています。この未来像を市民が共有し、実現したいとの思いから映画『100年ごはん』の製作を企画しました。大林監督に意志が伝わり、臼杵市有機農業の取り組みの第一歩を、素晴らしい映像で紡いでいただきました。この映画をたくさんの方に観ていただきたい。きっと美味しい野菜を食べたくなるはずです。そして臼杵の美味しい野菜を食べに来てもらいたい!
 今後も、自然と共生する農業、市民と農業が相互理解で成り立つ地域社会を目指し、少しずつでも、一歩一歩確実に進んで行きます。100年後の臼杵市の食卓が"正しいごはん"で賑わう姿を目指して。
 大分県臼杵市が取り組む有機農業を巡る、壮大にして素晴らしい試みに、導かれるままに取材を続けた4年間。《臼杵で起きているコト》を共に見詰め、体験したことで、たくさんの新しい発見がありました。いつの間にか《いま》しか見ない・見えないことで生活の安定を考えてしまいがちな風潮にある昨今、未来を見据えた「100年単位の仕事」に携わる臼杵市と、臼杵市民の皆さんの姿から、100年後は遠い未来ではない、「過去」と「いま」と「未来」は地続きであることを学びました。撮影素材は120時間ほど。貴重な瞬間に立ち合う機会を戴けた私の役割は、1人でも多くの人に臼杵市が行っている勇気ある取り組みを知って戴きたい、ただそれだけの想いに尽きます。
 『100年ごはん』は繋がり廻る命の道筋を紡ぐ臼杵の人人の群像劇。飛び抜けた主人公は登場しません。《みんなの映画》だからです。セミドラマタッチで綴る【はじめのはじまり】ドキュメンタリーです。「自然との共生=リビング・ハーモニー」を実践する臼杵市の未来への願いを、映画を通して心に感じて戴ければ幸いです。おいしい臼杵のお野菜たちと共に!
 「縁」とは誠に不思議なものです。
 奇しくも、私が始めて映画の世界に足を踏み入れたのも、この臼杵が出発点でした。
 臼杵に身寄りがあるわけでも無く、只々この町と繋がる不思議な「縁」によって私の映画人生は始まり、今回もまた新たな作品にひとつの命を吹き込むことが出来ました。
 コトの始まりは「"有機農業の里・うすき"という、市を挙げての壮大なプロジェクトの出立を"映画"という、文化的記録に残して子々孫々の代まで伝えていきたい」という後藤國利さん(前臼杵市長)の強い思いによるものでした。こうしてこの映画製作プロジェクトが立ち上がったのが、4年前の平成21年初夏。
 有機農業と同じように、そこにあるものを出来るだけそのままに表現し、映画『100年ごはん』は皆さんのお力添えで、ようやく収穫の時を迎えました。4年の長きにわたり、撮影に協力いただいた農家の皆さん、製作の陣頭指揮に立っていただいた中野臼杵市長を始め、職員の皆さん、そして、多くの市民の皆さん本当にありがとうございました。
 監督を始め、スタッフ・キャストの丹精込めた作品です。ぜひ、ごゆっくりと味わいながらご覧頂ければ幸いに存じます。
 朝霧の臼杵の台地にやがて朝日が上がり、鳥が鳴き、野菜に付いた水滴が弾ける。雄大な臼杵の景色、自然の美しさ、そこで農業を営む人人、素敵な場所です。
 私にとって前準備もなく始まった映画でしたが、4年という歳月の間に農業へのこだわり、食へのこだわりを身をもって感じました。最初の頃は、いきなり農家を尋ねては「今日は何かされますか」と不躾にお邪魔ばかりしておりました。段々と笑顔を感じる様になりましたが、それと同時にこれからの農業の難しさを痛感しました。
 監督もこのテーマに構成が一転、二転して行くのに苦慮されたと思います。
 撮影も出来るだけ土を意識して、ローアングルで野菜の元気と色を出す様に心掛け、少しでも監督に応えられればと思っていました。
 「ワタシとアナタ」のシーンは、ナチュラルでシンプルに行きたいという事で出来るだけ、ノーライトにしました。二人の演技に助けられました。
 監督がこのむずかしいテーマを大分に缶詰めになりながら編集され、最後に素敵な音楽もついて、すばらしい作品になったと思います。
 それから出演していただいた、農家の皆様の笑顔にまた会いに行きます。ありがとうございました。
 100年先の人を思いやる、それ以上に忍耐強い、おおきな優しさはあるでしょうか。臼杵市の土作りの取り組みについてうかがって、私はホンキで感動してしまいました。祖先と、子孫と、その繋がりのなかに、いま自分が生かされているということ。それはシンプルだけれど、眼の醒めるような事実です。

 『100年ごはん』に参加させていただけて、とても幸せです。この映画が、いまを生きるあなた――そして100年後のあなたにも――、確かに届きますように!
 未来を生きる子どもたちのために何ができるのだろう?最近はお芝居を創るときにそんなことばかり考えています。偉そうに上から目線でなく。そしていつも思うのは「想像力」という「生きる力」をつけてほしいな、と。本来、子どもは出会うものすべてが初めてだから、そのすべてを不思議に感じ、色々なことを想像し、世界を見つめているんだと僕は思います。そして僕ら大人が子どもたちからもしくは自分たちから、その「不思議」に思うところから始まる「想像力」を奪ってはいないだろうか、と。未来のこともそう。想像することから始めないと「想定外」を言い訳にする大人が増えるだけ。
 そんなことを考えている時に千茱萸さんからこの映画の話しを頂きました。100年後の未来を見据えて活動している大分県臼杵の人人の物語。「想像力」をフル回転させて、子どもの世代のために今出来ることを実践されている人人がいることを知りました。森を、土を、野菜を現在の技術を使って、きっと本来はこうだったんだろうなって想像力を使いながらその姿に戻して行こう、と。この映画に参加出来た事を誇りに思います。そして誇りに思える活動に参加する機会をくれた千茱萸監督ならびにこの映画にかかわっていらっしゃる皆様に感謝いたします。