はじめの1歩は100歩分! 革新的な農業方法をめぐる大分県臼杵市の人びとの記録映画。
 やがてその取り組みは農業だけではなく、林業、教育、給食センターや飲食業、NPOへと繋がり、人びとの暮らしの中へと広がってゆく。ドキュメンタリー映画の枠を超え、「いまのワタシ」(近衛はな)が「100年後のアナタ」(大谷賢治郎)に語りかけるというドラマを編み込むことで、「過去」「いま」「未来」は地つづきであることが、立体的に浮かび上がる。特出したヒーローをあえて設けず、"自然との共生=リビング・ハーモニー"をめぐる人びとを描いた群像劇。
 料理家でもある大林千茱萸監督は、この作品のために4年間臼杵市に足を運び、撮影素材は120時間。音楽には数多くの映画音楽で活躍する山下康介。主題歌に宮武希。映画館や映画祭で上映のほか、誰もが主催者になれる「映画+食事+トークセッション」という、毎回が一期一会の《五感で味わう》上映会を、日本各地をはじめ、スリランカ、ハワイ、アメリカ(LA/NY)など120箇所以上で展開中。この上映方式が「食育の最前線」として話題となり、「未来へつなぐ食のバトンーー映画『100年ごはん』が伝える農業のいま」として筑摩書房より書籍化。

左寄せの画像

 臼杵市は大分県の東海岸に位置する、人口約4万人の小さな市。醸造業や造船業など第二次産業が盛んだった臼杵市に、農業が盛んな大野郡野津町が合併した2005年より、有機農業への取り組みを開始。海と山を備えた地形のため、食材だけでなく景色も美しく、たびたび映画の舞台になっている。本作の監督・大林千茱萸の父である大林宣彦監督も『なごり雪』『22才の別れLycoris葉見ず花見ず物語』と二本映画を撮影。その縁が本作の誕生にも繋がっている。